大阪の不動産賃貸管理会社に勤務しているみやへい(@miyahei2023)です。
われわれ賃貸管理の仕事をしていると沢山クレームの連絡が入るのですが、
その中で「ガラスが割れたので修理をして欲しい」といった相談の連絡が入ります。
内容をよくよく聞いてみると、
「何もしていないのに、久々に窓ガラスを見ると勝手に割れていた。」という、客観的に聞くと、「そんなん何もしてへんのに勝手に割れるかいなー」とツッコミを入れたくなるような内容なのですが、実はよくある話なのです!
それは、「熱割れ」という現象によって窓ガラスにヒビが入ることがあります。
今回はそんな熱割れについて、その発生原因や対策、誰が修理費用を負担するのか、などについて書いていきますので、お困りの方は是非お役立ていただければと思います。
窓ガラスが熱割れする原因
窓ガラスが熱割れする原因は、そのガラスの性質にあります。
以下の2つが大きな要因です。
ガラスが熱割れする理由
- 熱膨張する
- 熱伝導率が低い
そうです。
ガラスは熱膨張し、対して熱伝導率が低いこと から熱割れが起こります。
例えば、冬場の夜間など日の当たらない時間にガラスが冷やされた後、日が昇ってガラスに直接日光が当たると、日光が当たった部分だけは温度が上昇して熱膨張する反面、熱伝導率が低いせいで、サッシで隠れた部分などの日の当たっていない箇所の温度は低いままの状態です。
そうすると日が当たっている部分と当たっていない部分で温度差が生じる為、熱割れが起こってしまうのです。
熱割れ防止の為に気を付けること
普段何気なく普通に生活していても、知らず知らずのうちに熱割れの発生を促進してしまうようなことをしてしまっているかもしれません。
そこで熱割れ防止の為に気を付けた方がよいことをまとめました。
カーテンや家具などを直接ガラスに触れないようにする
カーテンや家具などがガラスに触れていると、触れている部分に熱がこもりやすくなる為、結果温度が上昇し熱割れの原因になります。
ガラスに影をつくらない
物干し竿や室外機等でガラス部分に影ができてしまうと、影になっている部分の温度は当然低くなりますから、日光に当たっている部分との温度差で熱割れしてしまいます。
冷暖房の風をガラスに直接当たらないようにする
冷暖房の風を直接ガラスに当ててしまうと、ガラスの温度にムラが生じますので、直接当たらないようにする工夫が必要です。
窓ガラスにフィルムを貼るなら要注意
一般に窓ガラスの遮熱性や断熱性を上げるの為に、窓ガラスに遮熱シートなんかを貼ったりしている家庭も多いと思いますが、その良かれと思って貼っているシートが熱割れの原因になっているかもしれません。
フィルムを貼ることでガラスに熱がこもり、熱割れを引き起こします。
熱割れしやすいガラス
ガラスの中でも熱割れしやすいガラスとそうでないガラスがあります。
以下のガラスは熱割れを起こしやすいガラスの為要注意です。
網入りガラス
網入りガラスは比較的よく使われているガラスで、ガラスの中に格子状の金属ワイヤーが入っているガラスのことをいいます。
何故、ワイヤーが入っているかというと、別名防火ガラスというように、割れても飛散しにくい為、延焼を防ぐことができる為です。
火災が起きた際に普通のガラスだと、火災の熱により一瞬で全面がパリンと割れてしまいますが、網入りガラスの場合だとすぐにヒビは入ってしまうものの、中に入っているワイヤーがガラスの脱落を防ぎ、すぐにガラスが落ちないことで空気に出入りを抑えられるので延焼を最小に抑えることができます。
そんなメリットがある反面、一番熱割れしやすいと言われているのがこの網入りガラスなのです。
網入りガラスが熱割れしやすい理由
- 網を入れることによって、普通のガラスと比べて許容強度が落ちる
- 金属の網を使用している為、温度が上昇しやすい
- 雨水や結露などで網部分に水が入り込み、金属が錆びる為ガラスが劣化しやすい
網入りガラスを使用している場合は一層熱割れに注意したほうが良いでしょう。
厚みのある一枚ガラス
意外かもしれませんが、薄いガラスと比べて厚みのあるガラスのほうが割れやすくなります。
その理由は厚みがあるせいで部分的に温度差が生じやすくなる為、その温度差で熱割れしてしまうようです。
ただし、強化ガラスの場合は熱に強い為割れにくくなります。
熱線吸収ガラス
熱吸収ガラスとは、オフィスビルなんかの高層ビルによく採用されているガラスです。
そういったビルではガラスの面積が大きいところが多いですが、そのような造りだと通常のガラスでは内部の温度がかなり上昇してしまいます。
それを防ぐ為にガラスに特殊な加工を施して、熱を吸収させることによって内部の温度上昇を防ぐ役割を持っています。
一方その分熱がこもりやすい性質の為、熱割れしてしまうことがあります。
熱線反射ガラス
熱線反射ガラスとは、ガラスの表面に金属酸化物を焼き付けて特別なコーティングを施したガラスのことをいいます。
このガラスは遠くから見ると、光沢があり輝いて見えます。ハーフミラー効果があり、外側から中が見えにくい仕様になっています。
熱線吸収ガラスと同様に熱反射ガラスも熱割れしやすい性質があります。
賃貸で熱割れが生じたら基本的にはオーナー負担
賃貸物件にお住まいで熱割れによってガラスが割れてしまった場合は、基本的にオーナー負担で交換することになります。
何故なら賃貸の負担区分として自然損耗や経年劣化はオーナー負担になるからです。
ただし、ガラスの割れを発見した時点で、管理会社もしくはオーナーにすぐ報告するようにしましょう。熱割れでもヒビを放置したことにより悪化してしまった場合や、ガラスが割れたまま放置したことにより雨が室内に侵入して被害が出た場合は善管注意義務違反として借主が負担しなければならないケースもあります。
また、直さなければ生活に支障をきたす場合や緊急を要す場合などで、オーナーが直してくれない場合は、自分で直すことも考えてみましょう。
民法606条、608条の規定されている条文
(民法606条)
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
(民法608条)
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2020年4月の民法改正でより借主にとって都合のよい規定が明文化
(民法改正後)
(1) 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。
(2) 賃貸物の修繕が必要である場合において、次のいずれかに該当するときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
ア 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかか わらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
イ 急迫の事情があるとき。
熱割れで窓ガラスが割れたら火災保険は使えるの?
熱割れでガラスが割れて交換が必要になった場合に火災保険がおりるかどうかは保険会社によってことなります。
ガラスが割れた原因が、風で何かが飛んできてそれがガラスに当たって割れた場合(風災)や、例えばゴルフクラブをうっかり倒してしまいそれがガラスに当たって割れてしまった場合(不測かつ突発的な事故)は殆どの場合保険がおりますが、熱割れの場合は保険会社によってとらえ方が違います。
先述しましたが、熱割れによる破損は自然損耗や経年劣化の部類にあたる為、通常保険はおりませんが、保険会社によっては「不測かつ突発的な事故」の対象でみてくれる所があります。
保険会社によって内容が違いますので、一度保険会社に問い合わせみてください。
熱割れと何かが当たって割れた場合の割れ方の違い
熱割れによる破損と、何かが当たって破損したケースとでは、割れ方がまったくことなります。
熱割れの場合
このように1本筋が入ったような割れ方が特徴的です。
何かが当たって割れた場合
何かが当たって割れた場合は、当たった部分から蜘蛛の巣状にヒビが入るのが特徴的です。
ガラス交換の費用はいくらぐらいが相場?
勿論ガラスの大きさや素材によって値段は変わりますが、普通のガラスで1枚あたり大体10,000円~20,000円くらいが相場です。
また、網入りガラスの場合は、普通のガラスと比べてもう5,000円~10,000円ほど相場から高くなっています。
まとめ
今回は賃貸入居中における窓ガラスの熱割れについて記事にしましたが、いかがだったでしょうか。
前述しましたが、熱割れによってガラスが割れてしまった場合はオーナー負担で交換してもらえるケースが多いです。
帰宅していきなりガラスが割れていたとしたら、費用を請求されるのではないかという不安が出てきますが、熱割れが原因のこともあるんだと知っておくだけで、いざ割れてしまってもパニックになることは無いでしょう。