大阪の賃貸管理会社に勤務していますみやへい(@miyahei2019)です。
早速ですが、皆さんは賃貸物件を退去する際にトラブルに遭遇したことはありませんか?
通常、物件を退去する際にはオーナーや管理会社などと退去立ち合いを行います。
その退去立ち合いの際に傷んでいる所がないか等をチェックして、傷んでいる箇所があれば入居者(退去者)に請求がいくのですが、中には不当に高額な請求をされたり、敷金が返還されなかったり、請求の内訳が不透明だったりとトラブルに発展するケースが多々あります。
今回はそんなトラブルに発展しやすい、賃貸の退去費用について詳しく解説したいと思います。
賃貸マンションに必要な「退去費用」とは
賃貸マンションを退去する際にかかる費用とは、いわゆる「原状回復費用」のことです。
賃貸物件を借りる契約をすると殆どの契約書の条文には原状回復費用について書かれている項目があり、基本的には借主は原状回復義務を負うことになります。
ざっくりいうと原状回復義務とは、賃借物(賃貸物件)を借りてから生じた損耗を元の状態に戻す義務のことを指します。
こちらも参考に!
賃貸物件の退去時にかかる原状回復費用、クロスには減価償却を考慮?
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賃貸マンションの原状回復費用の定義とは?国土交通省のガイドラインを参考にしましょう
原状回復費用については、国土交通省がトラブルを避ける為に一定の基準を設けておこうということで、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下、国交省のガイドライン)」というものを制定しております。
賃貸借契約書は負担区分を細かく取り決めていないものが殆どの為、国土交通省のガイドラインを基に退去立ち合いを行うのが一般的です。
以下、原状回復の定義です。
賃借人の故意、過失、善管注意義務違反、通常の使用を超えるような使用の損耗・毀損の復旧すること。
引用:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
難しい用語を使っていますので簡単にわかりやすく言ったら以下の通りです。
◆故意過失とは
⇒わざと(故意)又は不注意(過失)によって生じた汚損・破損等
◆善管注意義務違反とは
⇒賃借人の管理が不十分だったことによって生じた汚損・破損等
◆通常の使用を超えるような使用の損耗・毀損
⇒普通に生活しているだけでは起こりえない汚損・破損等
原状回復費用は通常借主が負担することになりますが、自然損耗(通常の使用による損耗)や経年劣化による汚損、破損等については貸主(オーナーさん)の負担になります。
故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超えるような使用の損耗・毀損に該当するもの
以下のような項目が該当します。
これらによるものは退去時に請求されてもおかしくないでしょう。
退去者負担に区分されるもの
- 飲みこぼし等によって生じたカーペットのシミ
- 鍵の紛失
- 冷蔵庫下のサビを放置したことにより生じた汚損
- 荷物を搬入、搬出する際につけてしまった傷やへこみ
- 結露を放置したことによって生じたカビ
- 通常のクリーニングで落ちない程の油汚れ
- 重量物をかける為につけたビス跡、釘跡
- ペットが引っ掻いた柱や襖などの破損
- 網戸の破損
- 喫煙によるクロスのヤニ汚れ
- 煙草の焦げ跡
自然損耗・経年劣化に該当するもの
自然損耗や経年劣化による汚損破損は、通常オーナーが負担します。
以下が該当する項目になります。
貸主負担に該当するもの
- 冷蔵庫裏の黒ずみ
- 家具(テーブル)を置いていることによって生じた、床(クッションフロア)についた家具跡
- 畳やフローリングの日焼け
- ポスターなどを貼った画鋲の跡
- 取り外したエアコンのビス跡
- 設備の寿命による故障
上記の様なものが該当します。これらは通常オーナーさん負担になります。
入居年数によって負担割合が軽減するものも
入居年数が1年しか経っていないのに付けた傷と、入居年数10年以上で付けた傷とでは、請求される金額に差は出るのでしょうか。
答えはYESです。
例えば、故意または過失による汚損・破損があったとしても、居住年数が長ければ長い程負担割合は軽減します。
また、建物や設備、内装については年数が経てば当然劣化し得るものですので、劣化の部分に関してはオーナーさんのご負担になります。
国交省のガイドラインによると、クロスの耐用年数は6年となっておりますので入居して6年経過後にクロスの価値が1円になるような計算で算定します。
例えば耐用年数のちょうど半分にあたる3年お住まいだった場合は負担割合は半分(50%)で計算し請求する流れになります。以下のグラフを参考にしてください。
引用:一般社団法人 全国賃貸不動産管理業協会
上記のクロスのように、他にも表装や建具、家具、設備など、それぞれに耐用年数というものが決まっており、経過年数によって物の価値が減少するので、長く住めば住むほど負担割合も軽減されます。
ただし、中には耐用年数を考慮しないもの(畳表や襖、フローリング等)もあります。
ガイドラインよりも契約書の特約条項の方が優先される?
国土交通省のガイドラインはあくまでガイドラインであり法律ではありませんので、基本的には契約書の内容を遵守します。
但し、「修繕費用は全て借主負担」など、明らかに借主が不利になる契約内容の場合は無効になる場合があります。
目安として、特約が有効になる為には以下の要件を満たす必要があります。
特約が有効になるポイント
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって、通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
賃貸マンションを退去する際にかかる費用、各項目ごとの相場(関西版)
どういったケースで退去費用が請求されるかはおわかりいただけたかと思いますが、実際に幾らぐらい請求されるのでしょうか。
ここでは項目ごとにかかる費用の相場を解説したいと思います。
ハウスクリーニング費用は賃貸借契約書の特約条項をチェック
自然損耗(通常の使用による損耗)や経年劣化による汚損、破損等は貸主負担になるという観点から、通常ハウスクリーニング代はオーナーさんが負担することになります。
しかし、通常の使用を超えるような汚損があれば借主に特別清掃代を請求されることになります。
例えばカビやサビ跡、酷い油汚れなんかが該当します。
尚、賃貸借契約書の特約条項などにハウスクリーニング代は借主負担と記載があれば、残念ながら借主で負担しなければなりません。
特約条項に記載がある場合、殆どの契約書では金額についても明記してあります。
関西での相場は以下の表を参考にしてみてください。
関東ではもう少し高額になります。
間取り | 相場 |
1R.1K | 10,000円〜20,000円 |
1DK | 15,000円〜25,000円 |
2DK.1LDK | 20,000円〜30,000円 |
3DK.2LDK | 25,000円〜35,000円 |
3LDK〜 | 30,000円〜 |
上記の金額はあくまで参考ですので、もちろん上記の表の金額よりも請求の方が高くなるケースも多く存在します。
契約前に確認しておくことがベターでしょう。
各項目ごとの退去費用の相場
関西版ですが、私が普段見ている見積書を参考にすると以下の表に記載している金額ぐらいが相場です。
項目 | 相場 |
クロス貼り替え | 800円~1,200円/m |
CF(クッションフロア)張替え | 2,000円~3,000円/㎡ |
網戸張替え | 3,000円~5,000円/枚 |
襖張替え | 3,000円~5,000円/枚 |
畳表替え | 3,000円~5,000円/枚 |
畳新調 | 10,000円~15,000円/枚 |
風呂、キッチン カビ除去、特殊清掃 | 10,000円~20,000円/式 |
フローリングリペア補修 | 10,000円~50,000円/式 |
ボード補修 | 25,000円~50,000円/1箇所 |
エアコンクリーニング | 10,000円~20,000円/式 |
洗濯排水エルボー設置 | 1,000円~2,000円 |
鍵紛失によるシリンダー交換費 | 10,000円~30,000円 |
エアコン撤去費用 | 5,000円~10,000円 |
落書き除去、シール剥がし | 3,000円~10,000円 |
困ったときは専門家に相談しよう
不当な請求、高額な請求がきても戦う相手は不動産屋や大家さん。言うなれば経験者が相手になります。
言いくるめられて泣き寝入りする前に一度専門家に相談してみましょう。
・独立行政法人 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html
・日本司法支援センター 法テラス
https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/call_center/index.html
・豊田マンション管理事務所(㈱)敷金返還マニュアル
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html
・公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会
トラブルを回避する為に事前にやっておきたいこと
トラブルを回避する為に、以下の点に気をつけておきましょう。
入居時にチェックリストをつけて、写真も撮影しておく
中古物件の場合は、入居時に複数箇所傷んでいる状態で入居するケースが多いと思いますが、退去時に自分が付けた傷では無いのに請求されるなんてたまったもんではありません。
そんなトラブルを避ける為に、入居時には傷んでいる箇所をチェックしておき、念のため写真を撮影しておくことをおすすめします。
以下の記事でチェックリストの書式ダウンロードと、写真撮影の方法が書いてありますので参考にしてみてください。
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賃貸物件の入居時チェックリスト!入居前写真撮影が有効
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契約書、ガイドラインの内容を把握しておく
契約書や国土交通省のガイドラインを把握しているだけで不当な請求から逃れることができることもあります。
悪徳不動産屋やオーナーは素人相手だと、わからないものだと思って無理な請求をしてくることがあります。
おかしいと思った点を相手に指摘することで、「この客からは取れないな」と思わせることができます。
契約書は隅々まで読まなくても良いですが、敷金・原状回復、負担区分、特約条項などの関連していそうな部分については前もって読んでおきましょう。
<参考URL>
住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について - 国土交通省
退去負担を減額できる裏技!?
うっかりクロスに傷をつけてしまった、フローリングがへこんでしまった、そんな時でも裏技を使えば退去負担を軽減することができるかもしれません。
以下で紹介します。
便利グッズを使って傷を隠す
昨今、傷を隠す便利グッズが色々と出回っているので、それらを使えばうまく傷がごまかせるかもしれません。
クロスの傷や破れ、ネジ跡などを隠す
⇒軽度の傷やネジ跡ぐらいでしたらキレイに隠れます。
⇒少し範囲の広い傷や汚損があれば部分貼り替えをすればキレイに隠すことができます。ただし一般的な柄の壁紙に限ります。
フローリングや建具の傷を隠す
⇒軽度の傷ならかくれん棒でごまかすことができます。
⇒少し手ごわい傷やへこみなどは、このリペアセットがおすすめです。
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立ち合い前にキレイに掃除する
人によっては当たり前と思うかもしれませんが、当たり前のようで結構重要なんです。
退去立ち合いの際に清潔感のあるお部屋だと、キレイに使ってもらっていたんだなと思って印象が良くなりますが、逆に、キッチン周りは油でギトギト、お風呂はカビだらけとなるとそれだけで特殊清掃等の追加請求が発生するかもしれません。
時間に余裕のある方は荷物を出した後はキレイに掃除しておきましょう。
もちろん入居中にこまめに掃除しておくに越したことはありませんが…
まとめ
今回は賃貸マンションの退去費用について書きましたが、いかがだったでしょうか。
この記事で、退去費用の負担区分や費用の相場、退去負担を減らす裏ワザまで知っていただけたと思います。
ただし、実際はイレギュラーなトラブルに巻き込まれてしまうケースもあり、その請求が妥当か否かの判断が非常に難しい場合があります。
そんな時には一人で抱え込まず、上記にも書きましたが、専門家に相談することが一番です。
きっと解決につながるヒントが見つかるはず。
それではまた別の記事でお会いしましょう!!